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執筆者の写真藤井 充

トラブルから学ぶ私たちのモノづくり

更新日:2022年9月27日

Sunameriの製品化から2年余りが経ちました。

当初、フヂエンとしては初めての量産製品だったので、ある程度の「すったもんだ」は予期していたのですが、2020年2月からのコロナは全く予期していなくて、大変な時期を過ごしました。

部品が海外から入ってこない、入ってきても税関で2週間も3週間も留め置きされる。

物流が正常化してきたと思ったら、材料価格の上昇、物流コストの高騰、次から次へと課題が降りかかってきました。

そんな経験を通じて、私たちが取り組んでいる「日本でものづくり」について色々と考えることが多くありました。

今回は備忘録的ではありますが、ここに書き記しておきたいと思います。


「世界を支配しつつある中国のものづくり」

今回のコロナ禍の初期、Sunameriの中国製部品が納入されず、生産が止まるという事態が2か月半ほどありました。フヂエンは社員数名の小さい会社なので、生産が止まったとしても他の開発にシフトする等してやり繰りできましたが、多数の社員を抱える大きな企業はさぞ大変だったろうと想像します。

この事態に至るまで、私としては中国製の低コストな部品を多く採用することで製造原価をできるだけ下げて、価格競争力を持って販売を拡大して行くことが合理的な解であると考えていました。

しかし、それは中国という政治体制が日本とは全く異なる外国に自分たちの事業の行く末を委ねる事と同じであることに気付かされました。

そして実際に、世界中のものづくり企業はどっぷりと中国のものづくり支配の網の中にいると言えます。

今やあらゆるモノ、材料、部品、加工、さまざまな分野で中国と関わりの無いものは非常に少ないです。

でも別に、中国の陰謀でもなく、共産党が強制して出来たものでもなく、「安いから」という自由競争経済の正義に則って、世界の人たちが中国製品を選択した結果、今があります。


「中国の安さの理由は?」

あらゆるモノの価格は、誰かの労働の対価です。

材料を採掘した人の労働、素材を加工した人の労働、設計した人の労働、部品をトラックで運んだ人の労働などなど、基本的には人件費の積み上げによってモノの価格が出来ているといっても良いかもしれません。

なので、モノの値段を安くするには、人件費を安くする!がいちばん簡単で効く方法です。

もちろん、生産性の向上やら出来ることは多くありますが、直接効くのは人件費を安くする事です。

製造原価を下げて、販売価格を安くする、利益を1円でも多く得るには、人件費を安くする事が最も良く効くのです。

それをとても良く理解している中国は、あまり報道に載ることはありませんが「現代版階級制度」とも言える戸籍制度を用いることで、資本主義(風)経済を導入しているにも関わらず、経済成長しつつ人件費を安く固定する事に成功しています。

それはどんなシステムかというと、都市部にもともと住んでいる人たちと農村部に住んでいる人たちの戸籍が異なっていて、都市戸籍と農民戸籍で階級的に隔たりがあります。

本来、法律的には農民戸籍では、都市部に出て工場で仕事する事は出来ないことになっているのですが、都市部と農村部で貧富の格差が大きいこともあり、農村部の人たちは、より多い現金収入を求めて出稼ぎに出ます。これがいわゆる「農民工」というやつです。

この農民工の人たちは、表向きには工場で働けない身分の人たちですから、足元を見られて労働者の権利は保証されていませんし、給料は安く抑えられたままです。

2020年でも月給で5万円くらい、時給に換算すると310円です。

日本の最低賃金が950円くらいですから、1/3です。

深センで一緒に仕事した英語学科卒の大卒女性(20代後半)が7万円、

エンジニアの男性(30代前半)が11万、と言っていましたから、おおよそ1/3なんでしょうね。

この人件費の安さが中国の競争力の源泉になっているワケです。


プラスして、中国は受験競争が激しいのか、教育面でもレベル高いので、エンジニアリングの話で全く通じないという場面はありませんでした。

労働倫理の面では、お国の違いを感じる場面は多々ありましたが。(笑)


という、西側の民主主義国家では絶対に導入できない!階級制度を用いて人件費を安く抑えつつ、活発な投資を促す政策により、

「工場で働く人は安く、工場で動く機械は新しい日本製やドイツ製」という謎の光景が見れるのです。

実際に、私がお付き合いした中国の加工屋さんは、小汚い工場なのに、加工機は新しい森精機だったり、マザックだったりして驚きました。ウチなんて40年前の汎用機を使っているのに。(笑)

そして社長さんは黒塗りのベンツで空港まで迎えに来てくれます。

黒塗りのベンツは成功者の証なのかな?



「ゲームのルールが違う中国とどう戦うのか?」

というワケで、日本をはじめとする西側の自由主義経済圏の国々と中国とでは、違うルールでゲームをしています。

サッカーに例えるなら、中国だけ手を使って良い、みたいな感じでしょうか?(笑)

F1に例えるなら、中国だけ好きな時にDRS使える?みたいな。

陸上の100mに例えるなら、中国のレーンだけ地面がエレベーターになってる?みたいな。


ゲームのルールが違う点については、国家間の仕組みの違いなので、私のようないち事業者が文句言っても簡単には変わりません。

とはいえ、何もしなければ私たちのモノづくりは終わってしまうので、自分たちの強みを分析して、それをさらに強化して、勝てるフィールドで戦おう! という戦略を採る事にしました。


戦略の詳細については、ここで書くと同業他社にミネラルたっぷりの塩を送る事になりかねないので、書きません。

でも、その戦略をベースとして作られたのがSunameri2021です。

初期型のSunameriと形はあまり変わらないように見えますが、殆どフルモデルチェンジに近いです。

そして、現在開発を進めている新機種では、その新しい方向性がさらに具体的に反映されていきます。

これが上手く行くのか?全くわかりません。ギャンブルみたいなものです。

でも、他とは違うものを作れると思います。

皆様によりご支持いただけるモノ目指して頑張りますので、引き続きよろしくお願いいたします。


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